凹んだら読む本_第一章(5)

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『凹んだら読む本』_第一章(5)2021.11.04

5.「これからどうしたいか」に集中する

過去の人間関係やトラウマから解放されないことが、心の病気を引き起こすことも多い

私は、「メンタルセラピー」の考え方を広めるために、国際メンタルセラピスト協会。
という組織を主宰し、メンタルセラピストを養成する講座も開講しています。
この講座を受講する方々は、大きく3通りに分かれます。
3分の1は、ご自分が精神科や心療内科に通院して薬を飲んでいる方。
別の3分の1は、ご家族、たとえば息子さんやお嬢さんが、あるいはパートナーが精神科に通院して薬を飲んでいる方。
残り3分の1は、メンタルセラピストとして、うつに悩んでいる人の手助けをしたいという方です。

実は、このメソッドをつくった宮島先生自身が、7年もの間、うつだったのです。
うつを治すために、ご自分でも薬を飲んでいたし、患者さんにも薬を飲んでもらっていました。
しかし、自分も治らないし、患者さんも治らない。
「薬では、うつは治らないのではないだろうか」というところから、宮島先生が心理学やその他のさまざまな考え方を学んでいく中で、「うつは薬では治らない。考え方を変えることが重要だ」と気がつき、スタートしたのがこのメソッドです。
宮島先生のメンタルセラピーは、従来の、悩みを聞くカウンセリングと大きく違います。

たとえば、クライアントさん(患者さん)に対して、「何を悩んでいるのですか」などと聞くことはありません。
「あなたはどうなりたいと思って今日はここに来られましたか」という聞き方をします。
つまり、悩み相談ではなく、「これからどうしたいか」「どう生きたいか」という未来志向の問題解決法で尋ねていきます。これには理由があります。

過去を思い悩んでも、先には進めません。起きてしまったこと、自分で起こしてしまったことを後から憂えても、ほとんどの場合、残念ながら解決にはならないのです。
端的にいえば、「過去を思い悩んでも仕方がない」ということ。
それよりも、「これからどうしたいか」に集中することこそ重要です。
まずは「できることから」「具体的に」考えることがポイント。
悩みのスパイラルに陥っている人も、「これからの自分」を考え始めることで、思考が未来に向き、思考の転換が起こります。
心の不調で悩んでいる方、癒されたいと思っている方の思考は、客観的に見ていると、過去に捉われ、過去の人間関係やトラウマから解放されないという場合が多々あります。
人に対する恨みや憎しみ、恨みつらみから解放されないことで苦しんでいるのです。
自分を縛っている考え方は何でしょうか。

人生はこうあるべき、親はこうしなければならない、子どもはこうあるべきだ、という「ベき思考」の人が、うつになりやすい傾向があります。
メンタルセラピーの考え方は「自己解放」です。これまで自分を縛ってきた考え方を変えてみることがその第一歩。
前項の自己肯定感の話とも関連しますが、「自分は自分でいいんだ」と自分自身を認めてあげることから始めます。
本当は、自分はどうしたかったのか、どうなりたかったのか。
自分の本音の生き方や考え方を自分で認めてあげる。
まわりの人たちに言われたことではなく、「本当は自分がどうしたいか」「どうなりたいか」が大切なのです。

過去にいろいろな苦しみや悩み、恨みがあったとしても、とにかくここまで、がんばって生きてきたなら、過去に悩むよりも、現在のこと、未来のことを考えていきましょう。
実際、メンタルセラピスト養成講座の受講初日と3カ月後の終了日とで、まるで別人のように顔が変わった人を、私は何人も見てきました。思考が変わるだけで、人は変わるのです。
そのためにも、過去に捉われるのではなく、未来に焦点を向け、「これからどうしたいか」に考えを集中させることが効果的です。