凹んだら読む本_序章

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『凹んだら読む本』_序章2021.09.30

凹みやすい人は、「ものの捉え方」に特徴がある

精神的にストレスやダメージを受けても、凹みやすい人と凹まない人がいます。

その違いは何でしょうか。

それは、ストレスやダメージをうまくコント ロールできる人とできない人の違いです。
いま、ストレスが原因で、身体や心の不調を訴える人たちが本当に増えています。

でも、実はストレスには “よいストレス"と 悪いストレス" があります。
要は、ストレスそのものが身体や心にダメージを与えるのではなく、「それをどう捉えるか」によって、結果は大きく変わってくるのです。

たとえば、いままでの仕事が認められて課長に抜擢されたとします。
「課長に選ばれたし、これからもどんどん仕事をがんばっていこう」と思う人にとっては、課長になったことはっよいストレス"になります。

それに対して「課長に選ばれたけど、自分は本当にやっていけるんだろうか……」と不安に感じる人にとっては、課長に指名されたことは 悪いストレス"になります。

このように、「課長になったという出来事」がダメージを与えるのではなく、それをどう捉えるかによって、プラスにもなり、マイナスにもなるのです。
ストレスというものは、言ってみれば、自分がつくり出している「概念」にすぎません。
凹みやすい人はどうしてもいろいろな事象をマイナスに捉えがちで、一方、凹まない人は、それをプラスに捉えて前向きに対処しようと考えます。
これは、「捉え方」をちょっと変えてみるだけで、かなり解決できます。
起きたことは何も変わらなくても、捉え方が変われば、ストレスなく、あるいはストレスをだいぶゆるめて、そのことを受け入れることができるようになります。

「ストレスがかかるとどうなるか」は、3つのタイプに分かれる

「ストレス」という言葉は、いまから0年ほど前に、カナダのハンス。
セリエ博士という生理学者が提唱した言葉だそうです。
医学的には、環境因子 (ストレッサー)が身体に何一らかの影響を与えて、身体や精神に「ひずみ」が生じた状態をいいます。
われわれの心身に影響を与えるストレッサーは、大きく2つに分類されます。

①外部的ストレッサー
・タバコ、アルコール、排気ガス、花粉、カビ
・就職、転職、結婚、離婚、仕事や家庭生活のトラブル など

②内部的ストレッサー
・人間関係、不安、心配、飲み過ぎ、食べ過ぎ、過労 など

①は私たちを取り巻く環境の中にあるもの、のは自分で自分自身にストレスを与えているものです。
これらが、朝起きてから夜寝るまで、私たちの身体や心に刺激を与えます。
こうしたストレッサーを受けると、いろいろなストレス症状が表れてくるわけです。

基本的にストレス症状は「その人のいちばん弱いところ」に表れるといわれ、この表れ方には、主に3つのタイプがあります。
ストレスがかかると、肩がこったり、腰が痛んだり、目が疲れたりする人は「筋緊張型タイプ」。
それに対して、ストレス状態になると、お腹が痛くなったり、下痢になったり、
便秘になったりと、お腹に反応が表れるのが「胃腸型タイプ」。
同じく、めまいや動俸が激しくなったり、眠れなくなったりするのが「自律神経型タイプ」です。
これらの反応は、性格にも関連しているといわれます。

筋緊張型タイプの人は、がんばり屋さんに多いのです。
胃腸型タイプはまわりに気を使う、ちょっと神経質な人。
自律神経型タイプは完壁主義者が多いといわれます。
あなたはどのタイプでしょうか?
このような反応は、いわば私たちに「いま、ストレスがかかっていますよ」と警告をしてくれているのです。

一時的に落ち込むのは、誰でもあること

やっかいなのは、こうしたストレス状態が続いていても、一時的に快方に向かっているように感じるときがあることです。
実は、私たちの身体には、温度など身体の外の環境が変わっても、
体内の状態を一定に保とうとする ホメオスタシス(恒常性維持)と呼ばれる働きが備わっています。
多少の不調があっても、もとの元気な状態に戻ろうとする力です。
この作用によって、一時的に快方に向かっているように感じるのです。

それでもストレス状態が続いていると、私たちの心身はついに疲れ果ててしまい、身体や精神にいろいろな病気の症状が表れます。
いま、いちばん問題になっているのがうつです。うつの症状は次のようなものです。

・身体の症状……不眠、食欲不振、性欲減退、疲労感、頭痛、肩こり、便秘、下痢
・精神の症状……無力感、判断力低下、記憶力低下、仕事の能率低下、ミスが増える、自殺願望·実行

なんだか、見ているだけで凹んでしまいそうですよね……。
ちなみに現在、精神科で、うつかどうかの判定に使われているのは、次のような9つの基準です (「精神障害の診断と統計マニュアル」より)。
こちらも、当たり前ですが、なんだか凹むような項目がいっぱい並んでいます。

①ほとんど一日中抑うつ気分
②興味や喜びの喪失
③体重の増加や減少
④睡眠障害(不眠または睡眠過多)
⑤焦燥(あせり)や抑制(のろさ)
⑥疲労感、気カ減退
⑦自分を価値のない人間と思う罪悪感
⑧思考力、集中力、決断力の欠如
⑨くり返す死の願望

これらの項目のうち、①か②を含めて5つ以上が2週間続いていると答えると、「うつ」と診断されて、薬が出されます。
でも、よくよく見てみると、誰でもこんな症状になったことって、ありませんか?

たとえば、仕事で大きな失敗をしたとき、失恋したとき、大きく凹んだとき。
そんなときには誰でも、眠れなかったり、食欲がなかったり、一日中、落ち込んだ気分になったりしたことがあるはずです。

「薬を使わない精神科医」として活躍する宮島賢也先生は「うつかどうかは 病院に行ったかどうか"で決まる」と話しているくらいです。

次々に降ってくるストレスをどうよけるか?

2015年の記月から、従業員が0名以上の企業では、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度」が義務づけられました。
今後、多くの企業の健康診断には、ストレスチェックの項目が加わることでしょう。
問題はこの「ストレスチェック」でうつの傾向が見つかった人たちへの対応の仕方です。
うつ傾向の人たちが精神科や心療内科に送られたら「薬漬け」になり、薬の副作用で人生を台なしにする人が増えるのではないかと個人的に心配しています。
政府がこうしたストレスチェックを義務づけるという背景は、メンタルに不調を抱える人たちがいかに多いかということです。
実際、いま精神疾患で通院している人が400万人、そしてその予備軍が1000万人もいるといわれています。

私はこれまで企業や官公庁で、ストレスマネジメントやメンタルヘルスの研修を行ってきました。
ここまで見てきたように、メンタルヘルスの不調の誘因はストレスです。
つまり「ストレスをどう自分自身でマネジメントしていくか」が大切なポイントなのです。
人生、誰もが順風満帆なことはありません。凹むことも、嬉しいこともあったりしながら、一つひとつ乗り越えて人生を歩んでいます。
どんなに凹んだときも、そこから脱するワザを身につけていれば、長い間、心にダメージを受け続けたり、それによって、うつで悩んだりすることもありません。